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教育長あいさつ令和元年10月号

 

教育長あいさつ

 

あっぱれ! 清瀬の子供たち!


 

 手の中の 活字に思ふ 秋心(酔花幻)

 

10月17日(木曜日)から19日(土曜日)の三日間は「清瀬教育の日」でした。

 

 14校全校が学校や授業を公開したり、教育委員会主催事業を行ったりすることを通して、多くの市民の方々に本市の教育を知り、理解し、そして「社会総がかりの仲間」になっていただくことを目的とする取り組み。その一つが「ビブリオバトル」。今年度も清瀬高校を会場に、5校9名の中学生がバトルを展開してくれました。

 

 「ビブリオバトル」とは「知的書評合戦」ともいわれる能力開発を目的とするゲーム。2007年に京都大学の一人の研究員が考案したプログラムですが、今では小学生から大学生・一般にまで広がっています。

 

 ルールは

  1. バトラーが読んで面白いと思った本を持ち寄る
  2. 順番に一人5分間でその本の魅力を紹介する
  3. それぞれの発表後に、フロアを交えてその発表に関するディスカッションを2~3分行う
  4. 全ての発表が終了した後、「どの本が一番読みたくなったか」を基準にフロアが投票し、最多票を集めたものを「チャンプ本」とする

 

 9名のバトラーは、緊張しながらも堂々と、自らの言葉で、時にユーモアも交えながら、本の魅力を語り、オーディエンスとやり取りをし…。時に手元のメモに目を落とすことがあっても、原稿を読み上げるような生徒は一人たりともいませんでしたし、5分間という時間を余らせて「沈黙」が続いてしまうような生徒も一人もいませんでした。

 

 彼らの姿を観ると「あっぱれ! 清瀬の子供たち!」と心底思います。なぜこの9名はすごいのか。それは彼らが「自分の考えや想いを自分の言葉で、それも大勢の他者に理解・共感してもらえるように伝え、話すことができている」からです。そして「5分間という限られた時間の中でそれをやり遂げる力を持っている」からです。加えて「プログラムにはない想定外の質問に対しても、決して慌てることなく、それに応えることができた」からです。

 

 人間は考える葦である」はパスカルの有名な言葉ですが、人であれば誰もが常に「考えて」います。何かの作業をする時に「考え」、人から話を聞いて「考え」、テレビやインターネットから流れる情報を受けて「考え」、我が身に降りかかった出来事を通して「考え」、スポーツをしながら「考え」、音楽を聴いて「考え」、本を読んで「考え」…。

 

 しかし、その時の頭の中は混とんとしたまさに「カオス」の状態。他者に「伝える」ためには、自らが何を考えているのかを「自覚」したり、その考えを「整理」したり、また「論理的」に組み直したりすることが求められます。そして「自分の意見を堂々と述べる勇気」も必要です。これらは人間にしか持ちえない「高度な能力」です。

 

 しかし他者に「理解」してもらったり、「共感」してもらったりするためにはこの能力だけでは不十分です。「考えたこと」だけを論理的に語ったとしても、それだけでは人の心は動きません。自分の「考え」に「感じたこと」「想ったこと」「心の琴線に触れたこと」等を織り交ぜながら、かつ「他者の心の中」を慮り、「魅力的な言葉」や「人の心に残るフレーズ」を駆使しながら発信することが必要だからです。

 

 これこそが「主体的・対話的で深い学び」や「考え議論する道徳教育」等の言葉で表現されている、これから先の教育で子供たちに育むべき能力なのです。しかしこれまでの学校では教えてくれませんでしたし、習うこともできませんでした。ビジネスの世界に足を踏み入れて初めてこのトレーニングを受ける機会が与えられるのです(事実ビジネススクールでの「コミュニケーション講座」は人気No.1とのこと)。

 

 恐らく彼女・彼らは、この「高度な能力」を「本との対話」で磨いていったのでしょう。違う表現をすれば「本を通した自問自答」。「自己内対話」と言ってもよいかもしれません。

 

 「なぜ自分はこの本が好きなのか」「この本のテーマである『友情』とは何なのか」「なぜ私はこの本のこの一文に魅かれたのか」「作者のメッセージをいかに表現すれば他者にわかってもらえるのか」「私の思いに共感してもらうにはどんな話し方をすればよいのか」…。自らの中で「問い」を立て、自らの中で「熟考」し、自らの中で「解」を見出していったのでしょう。

 

 これはまさに「深い学びによって形作られた哲学」以外の何者でもありません。確固たる「哲学」があるからこそ想定外の質問にも対応できるし、与えられた時間を自在にマネジメントできるのです。「借り物の知識」や「原稿に書かれたことを記憶し読み上げる姿勢」「プログラム通りに事を進めていく態度」では決して成し得ないことです。

 

 彼らの姿は我々大人であっても、そうそうできないこと。私は今年還暦を迎えます。60年間も人としての修業を積んできたにもかかわらず、人前では緊張しますし、与えられた時間内で、自らの考え、想いや願いに納得や共感してもらえるような語りはいつまでたってもできません。市議会などで想定外の質問が飛んでくるとドギマギしてしまう。それを13~15年間しか生きていない彼らはやってのけているのです。だから「あっぱれ! 清瀬の子供たち!」は私の「掛け値なしの本音」なのです。

 

 清瀬の若き「読書アンバサダー」でもあり、誇るべき「プレゼンマイスター」でもある9名のバトラーに心から拍手を送りたいと思います。「あっぱれ! 9名の中学生!」「あっぱれ! 清瀬の子供たち!」

 

教育長 坂田 篤
 

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