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教育長あいさつ平成30年11月号

 

教育長あいさつ

                      

 

17文字が持つ力

 

 思い乗せ 結露をなぞる 17字

 

去る10月28日(日曜日)に清瀬けやきホールにて第10回石田波郷俳句大会の表彰式が行われました。

 

今年度は都内はもとより南九州市、松山市、霧島市、蕨市、はたまたワシントン日本人学校など、全国から、いや世界から6千句を超える投句がありました。

 

その中から栄えある三賞(大賞、市長賞、教育長賞)に輝いたのは以下の作品です。

 

【小学生の部】

 大  賞 トンボから ぼくの指先 とまったよ (清瀬第六小学校3年 藤澤 翼さん)

 市長賞 台風だ 大丈夫かな 祖父と祖母 (武蔵村山市立第七小学校5年 古川 琴菜さん)

 教育長賞 せんぷうき いいこいいこと いもうとを (清瀬第三小学校3年 山岸 すみれさん)

 

【中学生の部】

 大  賞 いつになく 自己主張なし 朧月 (清瀬中学校1年 香月 蓮大さん)

 市長賞 踏まれると 実は悲しい 霜柱 (清瀬第三中学校1年 坂間 蓮七さん)

 教育長賞 終わらない 魔物に追われる 夏休み(清瀬第五中学校2年 久永 稜さん)

 

 このホームページで毎月凝りもせずに駄作を披露し続けていますが、私は俳句に関しては全くの無作法者。彼らの作品にコメントをつけることなどできようはずがありません。しかし「珠玉」とはこのような作品を指すのだということだけは分かります。「すごい!」「素晴らしい!」という言葉しか出てきませんが、彼らには我々大人(少なくとも私)にはない、「すごい力」が育っていることは確かに感じます。

 

だから年甲斐もなく彼らを「うらやましく」思ってしまいます。私も身の回りのことをこんな純粋で素敵な眼差しで見つめてみたい、自分の心の中の風景をこんな思いがこもった言葉で表現してみたい。聞こえる音、漂う香りをこんな鋭く豊かで瑞々しい感性で捉えてみたい…。

 

 幼き子供は誰もが身の回りの目に映るもの、聞こえる音、食べ物の味、漂う香り、全身で感じる温度、母の言葉、父の行動…、すべてに興味・関心を抱きます。疑問を持ったり感動したり、言葉でうまく表現できなくともうれしくなったり悲しくなったり、楽しくなったり落ち込んだり、心が晴れやかになったり沈んだりするのです。

 

 そして子供たちは自らの心に宿った思いや願いに共感してほしいと願っています。面白いことは一緒に面白がってほしいし、「なんでだろう…」と感じたことは一緒に解決してほしいと思い、自分の感じ方を認めてほしいし「疑問」に感じたことを褒めてもらいたいと願っているのです。だから彼らは「こう思うの! ああ感じるの!」と繰り返し話をするし、「なぜ? どうして?」としつこいばかりに聞いてきます。

 

 これは大人には決してできない子供の特権。大人が同じことをやったら人格を疑われてしまいます。それ以前に、我々大人でも世の中は知らないこと、分からないことだらけなのに、「常識」に縛られて疑問を感じなくなってしまいます。疑問があったとしても体面を気にして「なぜ?」と素直に言えなくなるし、照れくささが先に立ち、自らの心の内を表出しなくなるのです。

 

大人になると普段目にしている風景が当たり前になってしまいます。時に秋の夜長に聞こえてくる虫たちの歌声にも気づかないし、時に季節が変わり木々の緑が茶色く変化してもそれを感じなくなります。気づいていたとしても、時間に追われてじっくりと自らの揺れる心を見つめたり、それを言葉にして表したりする余裕がなくなるのです。こんなことを繰り返していくうちにどんどん「感性」が枯れていきます。「ものを見る目」が濁っていきます。

 

 「そうなんだ、そう思ったんだ、すごい!」「へ―、そんなふうに感じたの?」「今あなたはこんな気持ちなのかな…」「その例え、とっても面白いね!」「お父さんも思いつかなかったな」「なんで疑問に感じたのかな?」「こんなことも不思議だよね」「どうすればいいのかな?」「この本を読んでみたらわかるかも」「お母さんも一緒に考えるね」…。

 

このように親が子供と同じ目線に立って「こう思うの、ああ感じるの」「なぜ?どうして?」と向きあってくれることで子供は安心して自分の思いや願いを語ることができるし、感じたこと、発見したことを素直に表現できるようになるのです。疑問を探し出す眼、探求することを面白がる心が育っていくし、大人になっても衰えることがない「感性の根っこ」が形作られていくのです。

 

 「当たり前のことだから分からなくていいの」「時間がないからあとでね」「そんなことお母さんも知らないわよ」「何度もうるさいね」「…(無視)」

 

もしも親が忙しさに任せて子供の素直な想いをしっかりと受け止められなかったり、疑問に対して真面目に取り上げずに切り捨ててしまったり、感動や発見の喜びを共有できなかったりしたらどうなるでしょう。子供は決して育ちません。そんな経験を重ねた子供は二度と自分の思いを語ろうとしなくなるし「なぜ?」とは聞かなくなってしまうのです。

 

 俳句は子供たちに実に様々な力を与えてくれます。普段気にも留めないような身の廻りの自然や出来事を目を凝らして観察することで、見えなかったものが見えるようになるし、聞こえなかった音が聞こえるようになるのです。疑問も感動もわき出てきます。「感性」という資質や「集中」「観察」という能力がどんどん育つのです。

 

そしてどのような言葉を使えば自らの発見や思いを伝えられるかを「考える」わけです。まさに「思考力」や「探究力」です。その後考えた結果や思いや願いをたった17文字で表現しなければなりません。試行錯誤をくり返しながら「言葉の力」が育っていくのです。

 

これらの力は、言うまでもなく国語や算数、理科や社会科、そして芸術等の教科学習の力を支える力となるし、道徳や総合的な学習の時間で身に付けるべき力の根幹になります。そして何よりも、生涯に渡って学び続けたり、よりよく社会生活を営んだりする原動力となるのです。

 

子供たちの頭も心も健やかに育てるために、清瀬ではますます俳句活動に力を入れていきます。


   ジュニアの部表彰式             ジュニアの部三賞受賞者    
          ジュニアの部表彰式                             ジュニアの部三賞受賞者

教育長 坂田 篤



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